上海中医薬大付属病院の見学(皮膚科)
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上海中医薬大付属病院の見学その3、皮膚科についてです。
上海中医薬大の副教授である王先生が診察する様子を2時間半にわたって見学させてもらいました。患者は老若男女様々で、メモした限りでは、ニキビ、あせも、脂漏性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、虫刺され、水虫、爪への真菌感染、爪が脆くなる、ジベルばら色粃糠疹、円形脱毛症、若白髪、痛風、リンパ節腫脹、糖尿病、外傷後に消えない顔の湿疹、の患者が来院していました。
先週紹介した失眠科とは異なり、診察はスピーディーに行われていました。初診患者で5,6分、再診なら2分ほどでした。科全体で一日500人の患者が来院し、医師一人当たり80人も診察しなければならないため、ひとりひとりに時間をかけるわけにはいかないようです。皮膚科は、経験豊富な医師ならば一目見ただけで診断がつくことが多いため、一般に診察時間は短めです。同じ理由で、中医学の診察方法の基本である脈診や舌診は、しばしば省略していました。スピーディーに診つつも、外面だけでなく内面の変化も読み取って処置しているそうです。さすがはベテランですね。さっと見て診察した後は、患者が持参したカルテ(中国ではカルテは病院ではなく患者が管理します)に診断結果を書き込んでいました。その間に助手の大学院生が、パソコンに処方箋を打ち込んでいました。
失眠科では20種以上の生薬を含む処方を出していましたが、王先生は5種類程度の生薬を用いた処方で、塗り薬や患部を浸して染み込ませる薬も処方していました。患部が乾燥していれば飲み薬を、じゅくじゅくしていれば塗り薬を出すことが多いそうです。
体幹の上部の皮膚病変は気逆(体内のエネルギーが上にあがってのぼせた状態)、中心部だと気滞(気のめぐりが悪い状態)、下部だと血熱(血液が過剰に熱を持っている状態)が原因のことが多いそうです。また、赤い丘疹も血熱が原因であることが多いとか。これだけ聞くと、ずいぶんシンプルに感じます。
王先生に中医学の強みをうかがったところ、対症療法に留まらず体質改善による根本的な改善を目指すことや、西洋医学より治療方法の幅が広く、より多様な病態に対処できること、を挙げていました。患者側もこうした中医学の強みを知ってきているのか、と思いきや、実際に数人に尋ねてみたところ、家に近いから、友達が良いって言ってた、など案外あっさりした理由で来院していました。どうやら、西洋医学も中医学も同程度に信頼していて、特段のこだわりはないようです。中国国内でも中医学の支持率には差があって、上海や北京、広州では支持率が高いそうです。
次は、日本人の中医師、藤田先生のクリニックの見学について書こうと思います。