東京慈恵会医科大学医学部│化学の傾向と対策

東京慈恵会医科大学医学部の傾向と対策(化学)を、年度ごとに掲載しております。過去から遡って確認する事により、より良い傾向を掴み対策を立てることが可能です。

 

 

※難易度・スピードの☆印は5段階評価になります。

2020年度入試

科目 化学 解答時間 2科目120分
読解力と思考力を要求される。 理論、有機
難易度 ☆☆☆☆ スピード ☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 理論 凝固点降下の問題。 計算、論述 標準
2 理論、無機 窒素化合物に関する総合問題。 計算 標準
3 有機、理論 生体構成化合物に関する構造決定問題。 計算 やや難
4 有機、理論 エステル合成実験問題。 計算、論述 標準

傾向と対策

計算問題は解答だけで途中計算は要求しない。選択問題は少なく、論述問題は字数制限で毎年出題される。2019年は描図問題も出題された。昨年よりも受験生にとって初見となりそうな部分が減りやや解きやすくなった。

理論と有機の分野の出題が多い。単純な知識だけでなく応用、思考、計算問題も出題される。

特に有機の分野は推測、思考問題が多い。無機分野の出題は多くはないが、大問1つを使って理論との融合で多角的な問題を作られることが多い。

受験生は知らない物質、反応を出題することで、思考力や読解力を試すことが多い。知らないものが出てくる分、問題文の読解に時間を要するため時間との戦いになりやすい。問題をざっと確認したうえで、できるところから解き時間配分を調整するなど臨機応変な対応を取る必要がある。2015年以降は思考力を試す問題が多くなった分、読解ができれば易しくはなっているが、その分時間がとられやすく、読解と思考の速度が要求される。

基本的な問題はただ解けるのではなく、素早く解けるようにする必要がある。平衡の分野は解く速度を大幅に上げることができるため、公式や解き方のコツは十分に理解して時間の余裕と確実な得点源にすること。応用的な入試問題によく触れることで応用性を上げておかなければ手痛い失点につながりやすいので対策を講じること。グラフの理解や実験操作といったところは意識しないと身につかないので、どうしてこうなるのかといった疑問を持ち、解決するような学習を心掛けたい。無機は理論と実験をあわせて理解すること。

有機は基本的な性質の理解は当然として、やや難しい構造決定問題も取り組みたい。高分子化合物についても基本知識を踏まえたうえで、異性体の考えを深めておくといい。知らない反応が出てもそれの答は本分に書いているので正確で素早い読解を身に着けたい。過去問を解く際は時間を計ることを忘れないように。


2019年度入試

科目 化学 解答時間 2科目120分
読解力と思考力を要求される。 理論、有機
難易度 ☆☆☆ スピード ☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 理論 電池の問題。熱化学の問題。イオン化傾向と熱エネルギーの関係は定義として重要で電子親和力とともに押さえておきたい。 計算 やや易
2 理論・無機 鉄イオンに関する総合問題。問題文を正しく読めれば易しい。慣れない問題に振り回されないように。簡単な問題から解くことを心掛けたい。 計算・描図 標準
3 有機・理論 イソニアジドの合成の問題。ヘモグロビンに関する読解問題。抗結核薬に関する読解問題。計算問題は易しい。対数の有効数字は小数点以下になることは気を付けたい。 計算・論述 やや易
4 有機・理論 多糖類の問題。グルコースの枝分かれ問題は有名問題ではあるが、対策できたかどうかの差が大きく出る。 計算・論述 標準

傾向と対策

2科目120分。大問4題。計算問題は解答だけで途中計算は要求しない。選択問題は少なく、論述問題は字数制限で毎年出題される。本年は描図問題も出題された。昨年よりも計算がやや易しくなった。
理論と有機の分野の出題が多い。単純な知識だけでなく応用、思考、計算問題も出題される。
特に有機の分野は推測、思考問題が多い。無機分野の出題は多くはないが、大問1つを使って理論との融合で多角的な問題を作られることが多い。
受験生は知らない物質、反応を出題することで、思考力や読解力を試すことが多い。知らないものが出てくる分、問題文の読解に時間を要するため時間との戦いになりやすい。問題をざっと確認したうえで、できるところから解き時間配分を調整するなど臨機応変な対応を取る必要がある。2015年以降は思考力を試す問題が多くなった分、読解ができれば易しくはなっているが、その分時間がとられやすく、読解と思考の速度が要求される。
基本的な問題はただ解けるのではなく、素早く解けるようにする必要がある。平衡の分野は解く速度を大幅に上げることができるため、公式や解き方のコツは十分に理解して時間の余裕と確実な得点源にすること。応用的な入試問題によく触れることで応用性を上げておかなければ手痛い失点につながりやすいので対策を講じること。グラフの理解や実験操作といったところは意識しないと身につかないので、どうしてこうなるのかといった疑問を持ち、解決するような学習を心掛けたい。無機は理論と実験をあわせて理解すること。
有機は基本的な性質の理解は当然として、やや難しい構造決定問題も取り組みたい。高分子化合物についても基本知識を踏まえたうえで、異性体の考えを深めておくといい。知らない反応が出てもそれの答は本分に書いているので正確で素早い読解を身に着けたい。過去問を解く際は時間を計ることを忘れないように。

2018年度入試

科目 化学 解答時間
思考力・応用力も問われ,計算量も多い。 理論 有機
難易度 ☆☆☆☆ スピード ☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 理論 Ⅰ:実在気体。用語のみで易しい。
Ⅱ:濃度。混合後の溶液の体積が不明な点に注意する。ここに気付けなければ論述も書けない。
Ⅲ:凝固点降下。Ⅱ・Ⅲとも計算は易しいが時間は掛かる。
記述、論述 3
2 理論
無機
両性元素・複塩について。問6までは確実に正解したい。200℃の時点で無水物になっていることと③の記述から気体Aが三酸化硫黄であることを導いて全問正解を狙いたい。 記述 3
3 有機 アドレナリンの構造と中和滴定。問4までは本文をよく理解していけば十分解答できる。中和滴定は非常にわかりづらいが,問6の論述は有機物の分離を考えれば書けるはず。問6が分かれば滴定時の反応の順序も理解しやすくなる。 記述、論述 5
4 有機 天然ゴムの性質,構造について。決して難しくはないが問題を理解するのに時間が掛かりそう。リサイクルは出題頻度も上がっているが覚えていない人が多い。易しいので必ず対策しておくこと。 記述 4

傾向と対策

教科書や図説などでは見慣れない物質が出ることも多く,思考力を要求される。ただしよく読んでいけば問われている知識は標準レベルのものが大半であるから,時間配分に気を付けて取りこぼしがないようにしたい。有効数字や構造式などは本文の記述の通りにしなければならず十分注意する必要がある。

2017年度入試

科目 化学 解答時間 2科目で120分
見慣れない物質やテーマを含め、思考力を問う問題が多い。 理論 有機
難易度 ☆☆☆☆ スピード ☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 無機
理論
取り扱いに注意が必要な薬剤がテーマ。次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする漂白剤と、塩酸に特に注目する。電離平衡とイオン濃度の計算を含む。全体として、平衡についての基礎的な考え方ができていれば、難しくはない。 記述論述 やや易
2 理論 Ⅰ:反応速度。計算そのものは難しくないが、濃度の時間変化から単位時間あたりの反応速度を求めるため、思考力が求められる。Ⅱ:再結晶がテーマ。再結晶による純度の計算。これも計算そのものは易しいが、手順を考えながら立式する必要があり、時間がかかる。 記述論述 やや難
3 有機 グルコースと脂肪酸の分解経路がテーマ。問題文の分量が多く、理解するだけでかなりの時間がかかると予想される。問題文中に複雑な化学式が登場するが、重要な部分に注目して素早く追っていく能力が必要。 記述
4 有機 抗菌物質のトリクロサンを題材に、その合成経路とダイオキシン生成をテーマとする。見慣れない物質の特徴をいかに早くつかみ、重要な部分に注目するかがカギ。問題文の中で、塩素化したフェノールのエーテル化反応が紹介されている。 記述

傾向と対策

理論と有機を中心に、広範囲から出題される。特に、化学平衡や反応速度について計算演習を十分に行ない、習熟しておく必要がある。基礎知識を応用したり推理したりする思考力が要求される問題も多い。問題の分量も多く、解答時間の配分が課題となる。見たことがない問題への対応力を磨くため、難問を演習するのも良い。

2016年度入試

科目 化学 解答時間 60分
難易度 ☆☆☆☆☆ スピード ☆☆☆☆☆

設問別分析表

大問 区分 内容 解答方式 難易度
1 電池・平衡 問1は標準的な問題。問2は水素が発生しないようアルカリ性の電解液になるよう塩(NaOHなど)を選べばよい。問3の記述は活性化エネルギーによる影響を記述する。標準レベル。問4については熱化学方程式の計算自体は簡易なものだが、生成熱と与えられた方程式の係数の違いに注意しないとケアレスミスとなる。

問5はSO2とHIOの半反応式から反応式を完成させる。標準レベル。

穴埋・記述 標準~やや難
2 浸透圧 逆浸透膜に関する問題。イオンの拡散がない両溶液での浸透圧の問題。問1問2までは基本的な問題であるが、問3からはイオン→沈殿するCuや錯イオンとなるアンモニア、電離するアンモニアなど一つの物質が様々な状態をとるため、状態理解が難しい。とくに問5においてはU字管の一方のみアンモニアの電離がみられ、両方の溶液の濃度差を考えないといけないため、難しい。問6問7は標準的な問題。 穴埋・記述 やや難
3 オゾン分解・マルコフニコフ則 二次試験で狙われやすい問題。問題文の説明をしっかり読み込むと難しくない。最後の設問では不斉炭素を見落とさないようにしたい。全問正答を狙いたい。 穴埋・記述 標準
4 高分子 グルコースとそのポリマーに関する問題。全体的に標準的な問題が多いが問4~問5はグルコールやアミロースの立体的な構造と、各成分原子の位置を考えることが求められる。暗記していなければ正答は難しい。特にグルコースの6番のCは回転が可能なので、問4ではケアレスミスがでやすい。 穴埋・記述 標準

2015年度入試

傾向と対策

確実な知識とともに問題文から必要な情報を読み取る力を必要とする出題になっている。また、時間のかかる問題も多々あるので時間配分についても注意が必要。

2014年度入試

傾向と対策

ハイレベルな問題演習を

計算問題が多く出題され、難易度は標準的であるが、計算に時間を要するものが多い。
難しい問題は後回しにし、時間配分に気を付けなくてはならない。
理論分野は化学平衡や反応速度の問題は難度が高いため徹底的に理解しておきたい。
無機分野はややマニアックな知識も問われるため、細かい部分にまで目を通しておきたい。有機分野は構造決定を中心に、各有機化合物の反応・合成・性質を正しく理解しておきたい。
アミノ酸や、天然高分子化合物についても出題されるため、注意が必要である。