公認心理師、新田猪三彦先生が教える「医学部受験をする親の悩みとは?」
医学部受験をする子どもの親も緊張や不安を感じている!
受験生を持つ親御さんの中には、受験に対して緊張感や不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
中学・高校と学年が上がるにつれて、子どもが勉強や学校のことについてあまり話をしてくれなくなり、家ではあまり勉強している様子もなく、「ちゃんと医学部受験のことを考えているのか」と不安に感じた経験がある人もいるかもしれません。
また、子どもの生活習慣を振り返ってみると、
- 「朝、子どもを起こそうとしても、なかなか子どもが起きない」、
- 「夜遅くまで、ラインやツイッターなどスマホを見ていることが多く、寝る時間が遅い」
など、本当に勉強しているのか不安に感じた経験がある人もいるかもしれません。
私のカウンセリングでも、様々な相談があります。
その中で多いのが・・・
「子どもにどんな言葉をかけたら良いか分からない」というものです。
「勉強しなさい」と言っても子どもは勉強しないと頭では分かっているものの、勉強してない様子を見て、ついつい「勉強しなさい」と言ってしまう。
夜遅くまでスマホを使って、勉強しない様子を見て、イライラして感情的なことを言ってしまう。
どの親御さんも、子どもに合格してほしいという気持ちがあるので、どうしても感情的になってしまうということがあるかもしれませんね。
予備校生も、家庭でどんな言葉をかけてもらうかによって、勉強へのモチベーションは変ってくるものです。
では、どんな言葉がけが良いのでしょうか。
「褒めたら良いのかな、でも、注意しないといけないこともあるよな・・・」などと考えこんでしまうかもしれませんね。
普段、何げなく使っている言葉だけに、変えようとすると難しい面もあります。
そこで、まずは、親御さん自身が「自分を褒めること」からスタートしてみましょう!!
医学部受験をする親も自分自身を褒める
スイスの生物学者アドルフ・ポルトマンは、大型動物や小型動物などの研究の中で、「人間の赤ちゃんは、本来は21ヶ月で生まれてくるところを、身体的な成長よりも大脳の成長を優先させて10ヶ月で生まれてくる」と発表し、このことを「生理的早産」と呼びました。
親御さんの中には、赤ちゃんの身体の成長を思い出した時に、頭部から下部へ、中心から末端へと身体が成長していった記憶がある人もいるかもしれません。
スイスの生物学者アドルフ・ポルトマンとは?
※コトバンクへのリンクです。
人間の赤ちゃんは、同じ哺乳動物の馬などと違い、生まれてすぐに立つことができません。
他の哺乳動物と比較した時に、人間は未成熟な身体で生まれてきているのです。
しかし、未成熟だからこそ、7ヶ月の時にお座りができた、10ヶ月の時にはいはいできた、1歳の時に一人で立てたなど成長の様子を見ることができるのです。
子どもの成長を実感しながら「できた」ということに対して、自然に子どもを褒めることができていたのではないでしょうか。
ところが、子どもが成長していくにつれて、
- 「あの子は、静かに座っているのに、うちの子は落ち着きがなくて、じっとしていられない。」
- 「あの子は、字が書けるようになったけど、うちの子は、字もちゃんと読めない。」
などと、他の子どもと比較して、自分でも気づかない間に、「できること」よりも「できないこと」に焦点が向いてしまうこともあったのではないしょうか。
親御さんの気持としては、「できるようになってほしい」という期待があったのかもしれません。
特に、医学部を受験する予備校生の場合、親御さんだけでなく、周囲の期待も大きかったのではないかなと思います。
期待が大きいだけに、本人だけでなく、親御さんもプレッシャーや不安を感じたことがあるのではないかなと思います。
そんな中で、理想の親子像を描き、理想と現実が異なり、自分自身に対しても、「これができない」、「あれがダメ」というような言葉を気づかない間に使っていたということはありませんか。
まずは、親御さんも自身が、「自分は頑張ってきたんだな」と自分を認めてあげてください。
まず、自分自身に「どんなことができたのか??」という質問をしてみてください。
意識的に褒める練習をしてみることにチャレンジしてみてください。
自分自身を褒めることができるようになったら、次に、子どもを褒めることに意識を向けてみましょう!
医学部受験をする親は意識して子どもを観察する!
アドルフ・ポルトマンの「生理的早産」の部分でも触れましたが、子どもが小さい頃は、身体の成長が目に見えるので、
褒めることが視覚的にはっきり見え、褒めやすいという状況があります。
しかし、年齢が上がるにつれて、視覚的に見えるものが少なくってきます。
学校のことなどあまり話をしない子どもであれば、学校の成績くらいしか目に見えて褒める材料がないかもしれません。
そのため、子どもの年齢が上がるにつれて、「褒めることができる材料を意識的に探すこと」が大切になってきます。
褒めることは何か大きいことである必要はありません。
日常生活の些細なことで構いません。
例えば、
- 「朝、いつもより2~3分少早く起きてきた。」
- 「部屋の片づけを手伝ってくれた。」
- 「玄関のインターホンで来客に対応してくれた。」
など日常で起きることで良いのです。
子どもの行動をよく観察し、褒めるポイントを探してみましょう。褒めることで、受験生のメンタル面も少し改善してくる部分もあります。
また、成績に関しても、「行動」や「努力」を褒めた方が、成績が向上するという実験結果があります。
「頭がいいね」と言葉をかけるグループと、「よく頑張ったね」と言葉をかけるグループに分けて、成績の変化を検証したところ、「よく頑張ったね」と褒めたグループが「頭がいいね」と褒めたグループよりも成績が向上しました。
子どもがどんな行動をしているのか観察し、褒める言葉が浮かばなければ、話を聴くだけでも良いですし、共感するだけでも構いません。
「褒める」よりも「共感」が大切な場面もあるでしょう。
「がんばったね」、「ありがとう」などの言葉をかけるだけでも構いません。
まずは、もう一度、よくお子さんを観察してみてください!
まとめ
医学部を受験する予備校生の親御さんの多くは、受験生と同じように不安や緊張感を感じている。
特に、医学受験に関しては、周りの期待などもありプレッシャーを感じやすい状況にあるため、親自身が理想を高く持ち、子どもだけでなく、自分自身のできていない部分に意識が向きがちである。
まずは、親自身が自分を満たすためにも、自分自身を認め、褒める。
そして、子どもを観察し、意識的に子どもを褒め、共感したり、「がんばったね」、「ありがとう」などの言葉を子どもにかけることが大切。